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中華人民共和国専利法(二〇〇八年改正)

2012-08-08

以下の訳文はあくまで原文理解の参考のための仮訳であり、詳細の確認は必ず中国語原文で行っていただきますようお願いいたします。

(一九八四年三月十二日第六 期全国人民代表大会常務委員会第四回会議で承認可決、一九九二年九月四日第七 期全国人民代表大会常務委員会第二十七回会議「『中華人民共和国専利法』の改正に関する決定」に基づき第一次改正、二〇〇〇年八月二十五日第九期全国人民代表大会常務委員会第十七回会議「『中華人民共和国専利法』の改正に関する決定」に基づき第二次改正、二〇〇八年十二月二十七日第十一 期全国人民代表大会常務委員会第六回会議「『中華人民共和国専利法』の改正に関する決定」に基づき第三次改正。)

目次

第一章 総則
第二章 権利が受けられる要件
第三章 出願
第四章 出願の審査及び査定
第五章 権利の期限、終了及び無効
第六章 強制実施許諾
第七章 権利保護
第八章 補則

第一章 総則

第一条  発明創造の権利利益の保護、発明創造の奨励、発明創造の応用推進、創造力の向上、及び科学技術の進歩と経済社会発展の促進を目的として、この法律を制定する。

第二条  この法律で発明創造とは、発明(以下、「発明特許」)、実用新型(以下、「実用新案」)及び外観設計(以下、「意匠」)をいう。
発明特許とは、製品、方法又はその改善に対して生み出された新しい技術案を指す。
実用新案とは、製品の形状、仕組み又はそれらの結合で生み出された実際の使用に適した新しい技術案を指す。
意匠とは、製品の形状、模様又はそれらの結合及び色彩と形状、模様との結合により生み出された美的センスに富み、且つ産業に適用可能な新しいデザインを指す。

第三条  国務院特許行政部門は全国の特許業務を管理し、統一して出願の受理及び審査を行い、法律に基づいて特許権を付与する。
省、自治区、直轄市人民政府の特許業務管理部門は、各行政区域内の特許管理業務を行う。

第四条  出願の発明創造が国家安全又は重大な利益に関わるもので、秘密保持の必要がある場合は、国の関連規定に基づいて処理を行う。

第五条 法律、公衆道徳に違反、又は公共利益を害する発明創造は特許を受けられない。
法律、行政法規の規定に対して遺伝資源を取得又は利用し、且つ当発明の完成を該遺伝資源に依存するものは、特許を受けられない。

第六条  個人が所属(勤務)する企業、機関、部門等での職務遂行又は主に職場の物質的技術条件の利用によって完成された発明創造は職務発明とする。職務発明の特許出願の権利はその所属先に帰属し、出願が承認された後、当該所属先が特許権者となる。
非職務発明創造については、特許出願の権利は発明者又は考案者に帰属し、出願が承認された後、当該発明者又は考案者が特許権者となる。
その所属先の物質的技術条件を利用して完成された発明創造については、当該所属先と発明者又は考案者間に契約があり、特許出願の権利及び特許権の帰属に対して取り決めがある場合は、それに従う。

第七条  発明者又は考案者の非職務発明の特許出願に対しては、如何なる所属先又は個人もそれを制限してはならない。

第八条  二以上の所属先又は個人が共同で完成させた発明創造、一つの所属先又は個人が他の所属先又は個人の委託を受けて完成させた発明創造については、別段に取り決めのある場合を除き、特許出願の権利は単独又は共同で完成させた所属先又は個人に帰属し、出願が承認された後、出願した所属先又は個人が特許権者となる。

第九条 同様の発明には、そのうちの一つにのみ特許が付与される。 但し、同一の出願人が同日、同様の発明に対して実用新案と特許を共に出願して、先に取得した実用新案権が失効する前に、且つ出願人が実用新案権の放棄を表明した場合は、発明特許を付与することができる。
二人以上の出願人がそれぞれ同一の発明創造の特許出願を行った場合、特許権は先に出願した出願人に付与される。

第十条 特許出願権及び特許権は譲渡することができる。
中国の所属先又は個人が外国人、外国企業又は外国のその他の組織に特許出願権又は特許を譲渡する場合、関連法律、行政法規の規定に従って手続を行わなければならない。特許出願権又は特許権を譲渡する場合、当事者は書面で契約を締結し、且つ国務院特許行政部門に登記しなければならない。国務院特許行政部門はそれを受けて公告を行う。特許出願権又は特許権の譲渡は登記された日から効力が発生する。

第十一条 特許及び実用新案の権利付与の後、この法律に特別に規定がある場合を除き、如何なる所属先又は個人も、特許権者の許諾を受けずにその権利を実施すること、即ち、生産経営を目的として、その特許製品を製造、使用、販売の申し出、販売、輸入をしてはならず、その特許方法を使用してはならず、当該特許方法により直接得た製品を使用、販売の申し出、販売、輸入をしてはならない。意匠権の付与後、如何なる所属先又は個人も、権利者の許諾を受けずにその意匠権を実施、即ち生産経営を目的としてその意匠製品を製造、販売の申し出、販売、輸入をしてはならない。

第十二条 他人の特許を実施する場合、如何なる所属先又は個人も特許権者と書面にて実施許諾契約を締結し、特許権者に特許使用料を支払わなければならない。許諾を受けた者は、契約で取り決めのある以外の如何なる所属先又は個人に対しても当該特許の実施を許可する権利を有しない。

第十三条 特許の出願公開後、出願人はその発明を実施する所属先又は個人に適当な費用の支払いを求めることができる。

第十四条 国有企業、事業体の発明特許が国の利益又は公共の利益に重大な影響を与える場合は、国務院の関係主管部門及び省、自治区、直轄市人民政府が国務院の認可を受けて、認可の範囲内にてその普及?活用を決定することができ、指定した所属先に実施を許諾することができる。実施する所属先により国の規定に基づいて特許権者に使用料を支払う。

第十五条 特許出願人又は特許の共有者で権利行使に対する取り決めがある場合は、その取り決めに従う。取り決めが無い場合は、各共有者は当該特許を単独で実施することができ、又通常実施権を他人に許諾することができる。該特許の実施を他人に許諾した場合、使用料は共有者間で分配しなければならない。前項に掲げる以外の場合、共同で所有する特許出願権又は特許は共同所有者全員の同意を得なければならない。

第十六条 特許を付与された所属先は、職務発明創造の発明者又は考案者に奨励を与えなければならない。特許が実施された後に、その普及?応用の範囲及び取得した経済的効果に基づいて発明者又は考案者に妥当な報酬を与える。

第十七条 発明者又は考案者は特許文書に自身が発明者又は考案者であることを明記する権利を有する。特許権者はその特許製品又はその物の包装に特許表示を附す権利を有する。

第十八条 中国に住所又は居所(営業所)を持たない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で特許を出願する場合、その所属する国と中国との間で締結した取り決め又は共に加盟している国際条約、又は互恵原則に従って、この法律に基づいて処理する。

第十九条   中国に住所又は居所(営業所)を持たない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で特許を出願する場合及びその他特許に関する手続を行う場合は、法に基づいて設立された特許代理機関に委託しなければならない。中国の所属先又は個人が国内で特許を出願する場合及びその他特許に関する手続を行う場合は、法に基づいて設立された特許代理機関に委託することができる。特許代理機関は法律、行政法規を遵守し、被代理人の委託により特許出願又はその他の手続を行わなければならない。被代理人の発明の内容に対し、特許出願においてすでに公開又は公告されている場合を除き、秘密保持の責任を負う。具体的な特許代理機構の管理規定は国務院が定める。

第二十条 如何なる所属先又は個人も、中国で完成された発明又は実用新案を外国で出願する場合は、事前に国務院特許行政部門が行う秘密保持審査を経なければならない。秘密保持審査の手続、期限等は国務院の規定に従う。中国の所属先又は個人は、中華人民共和国が加盟している関連の国際条約に基づいて国際出願の手続を行うことができる。出願人が国際出願を行う場合は、前項に掲げる規定に従わなければならない。国務院特許行政部門は、中華人民共和国が加盟している関連の国際条約、この法律及び国務院の関連規定に従って国際出願を処理するものとする。この条の第一項の規定に違反して外国で出願した発明又は実用新案については、中国において特許が受けられない。

第二十一条 国務院特許行政部門及び特許復審委員会は、客観、公正、正確、迅速の要求に従い、法に基づき特許に関する出願及び請求を処理しなければならない。
国務院特許行政部門は完全、正確、そして速やかに特許情報を公表し、定期的に特許公報を発行しなければならない。公告又は公開前の状態にある特許出願に対し、国務院特許行政部門に従事する者及び関係者はその内容に対して秘密保持の責任を負う。

第二章 特許を受ける条件

第二十二条  権利が受けられる発明及び実用新案には新規性、進歩性及び実用性を備えていなければならない。新規性とは、当該発明又は実用新案が先行技術に該当せず、如何なる所属先又は個人も出願日以前に同様の発明又は実用新案を国務院特許行政部門に出願しておらず、且つ出願日以後に公開された出願書類又は公告された特許文献に記載されていないことを指す。進歩性とは、先行技術と比較して、該発明に際立った実質的特徴及び顕著な進歩を有し、該実用新案に実質的特徴及び進歩が見られることを指す。実用性とは、該発明又は実用新案による製造、又は該発明又は実用新案の使用が可能で、且つ有益な効果を生むことを意味する。この法律で「先行技術」とは、出願以前に国内外で公然知られた技術をいう。

第二十三条  意匠権を付与する意匠は、先行設計に属さず、 如何なる所属先又は個人も出願日以前に同様の意匠を国務院特許行政部門に出願しておらず、且つ出願日以後に公告された出願文献に記載されていないこと指す。意匠権を付与する意匠は先行設計又はその特徴との組み合わせと比べて、顕著な違いを有するものでなければならない。意匠権を付与する意匠は出願日前に既に他人が得ている合法的権利と衝突があってはならない。この法律で「先行設計」とは、出願日以前に国内外で公然知られた意匠をいう。

第二十四条  出願する特許が出願日前の六カ月間に、次の各号のいずれかに該当する状況があった場合は、その新規性を失う。
(1)中国政府が主催又は承認した国際展示会に初めて出品された。
(2)学術会議又は技術会議で初めて発表された。
(3)他人が出願人に無断でその内容を漏らした。

第二十五条 次に掲げる場合は、特許(実用新案、意匠)を受けられない。
(1)科学の発見
(2)知的活動の規則及び方法
(3)疾病の診断及び治療法
(4)動物及び植物の品種
(5)原子核の変換方法により得られる物質
(6)平面印刷の模様、色彩又はこれらの結合により生み出された、主に標識の役割を果たすデザイン

第三章 出願

第二十六条 発明特許又は実用新案の出願をする場合、願書、明細書及びその要約、及び特許(実用新案)請求の範囲の書類を提出しなければならない。願書には発明特許又は実用新案の名称、発明者の氏名、出願人又は名称、居所及びその他の事項を明記しなければならない。明細書は当業者が実現可能であることを基準として、発明特許又は実用新案を明確、完全に説明しなければならない。必要な場合は図面を添付する。要約では発明特許又は実用新案の技術の要点を簡潔に説明しなければならない。特許請求の範囲は明細書を根拠として、保護を求める範囲を明確、簡潔に説明しなければならない。遺伝資源に依り完成された発明創造について、出願人は特許出願書類において遺伝資源の直接的由来と原始的由来を説明しなければならず、原始的由来を説明できない場合は、その理由を陳述しなければならない。

第二十七条 意匠を出願する場合、願書及び該意匠の図面又は写真及び意匠の簡単な説明等の書類を提出しなければならない。出願人が提出する図面又は写真は、保護を求める製品の意匠を明確に表したものでなければならない。

第二十八条 国務院特許行政管理部門が特許出願書類を受け取った日を出願日とする。出願書類が郵送された場合、郵送物の消印日を出願日とする。

第二十九条 出願人は発明特許又は実用新案が国外で最初に出願された日より十二月内、又は意匠が国外で最初に出願された日より六月内、及び中国における同一の名称の出願に対して、該出願国と中国との間で締結された協定又は両国が加盟している国際条約の規定に基づいて、或いは二国間の優先権の相互承認の原則に基づいて優先権を享有することができる。出願人は発明特許又は実用新案が中国で最初に出願された日から十二月内に国務院特許行政部門に同一の主題で行った出願に対し、優先権を享受できる。

第三十条 出願人が優先権を主張するときは、出願時に書面で表明し、三月以内に最初に提出した出願書類の副本を提出しなければならない。書面で表明しなかった場合、或いは期限内に出願書類の副本が未提出の場合、優先権は主張していないものとみなす。

三十一条 発明特許又は実用新案の出願はそれぞれ一つの発明特許又は実用新案に限らなければならない。一つの全体的な発明構想に属す二以上の発明特許又は実用新新は、一件の出願とすることができる。意匠の出願は一つの意匠に限定らなければならない。一つの製品における二以上の類似する意匠、又は同じ分類で且つ一組として販売又は使用される製品における二以上の意匠は、一件の出願とすることができる。

第三十二条 出願人は権利が発生する前であれば何時でも出願を取り下げることができる。

第三十三条 出願人は特許出願書類を補正することができる。但し、発明特許及び実用新案の出願書類に対する補正は、明細書と特許(実用新案)請求の範囲の記載範囲を超えてはならず、意匠に対する補正は、元の図面又は写真で示された範囲を超えてはならない。

第四章 特許出願の審査と査定

第三十四条 国務院特許行政部門が発明特許の出願を受け取った後、予備審査を経てこの法律の規定要件を満たしていると判断した場合、その発明の内容は出願日から十八月後に速やかに公開される。国務院特許行政部門は出願人の請求に基づいて早期に出願公開することができる。

第三十五条 国務院特許行政部門は、発明特許出願の出願日から三年以内に出願人の請求に基づいて実体審査を行うことができる。出願人が正当な理由なしに期限内に実体審査請求を行わなかった場合、当該出願は取り下げられたものとみなす。国務院特許行政部門は、必要と認める場合に、自発的に発明特許の出願について実体審査を行うことができる。

第三十六条 発明特許の出願人が実体審査を請求するときは、出願日前におけるその発明に関係のある参考資料を提出しなければならない。先に外国で出願されている発明特許については、国務院特許行政部門が出願人に対して期限内に当該国が出願の審査のために検索を行った資料又は審査結果の資料を提出するよう要求できる。正当な理由がないのに期限内に提出しなかった場合、当該出願は取り下げられたものとみなす。

第三十七条 国務院特許行政部門が発明特許の出願に対する実体検査を行った後に、この法律の規定に違反すると判断した場合、出願人に通知を行い、指定した期限内に意見陳述を行うよう、又は出願の補正を行うよう要求しなければならない。正当な理由がないのに期限内に応答しない場合は、当該出願は取り下げれられたものとみなす。

第三十八条 国務院特許行政部門は、出願人が発明特許の出願に対する意見陳述又は補正を経た後も、依然この法律の規定に違反していると判断した場合は、これを拒絶しなければならない。

第三十九条 発明特許の出願について実体検査を経て拒絶の理由を発見しないときは、国務院特許行政部門は特許を付与する決定を下し、特許証を交付すると同時に登録及び公告を行う。特許権は公告日から効力を生じる。

第四十条 実用新案と意匠の出願について予備審査を経て拒絶の理由を発見しないときは、国務院特許行政部門は、実用新案権及び意匠権を付与する決定を行い、それぞれの権利証書を交付して登録及び公告を行う。実用新案権及び意匠権は公告日から効力を生じる。

第四十一条 国務院特許行政部門に特許復審委員会を設置する。特許出願人が国務院特許行政部門の下した出願却下の決定を不服とする場合、通知を受け取った日から三月以内に特許復審委員会に再審請求を行うことができる。特許復審委員会は再審を行った後に審決を下して出願人に通知する。特許出願人は特許復審委員会の審決を不服とする場合、通知を受け取った日から三月以内に人民法院に提訴することができる。

第五章 特許権の存続期間、終了及び無効

第四十二条 発明特許の存続期間は出願日から二十年とし、実用新案の存続期間は出願日から十年とする。

第四十三条 特許出願人は特許が付与された年から年金の納付を開始しなければならない。

第四十四条 次の各号のいずれかに該当する場合は、特許権が存続期間満了前に消滅する。
(一) 年金が規定に従って納付されていない場合
(二) 特許権者が書面を以てその権利を放棄した場合
存続期間満了前に特許権が消滅した場合、国務院特許行政部門が登録及び公告を行う。

第四十五条 国務院特許行政部門が特許付与を公告した日から、当該特許権がこの法律の関連規定に違反すると考える場合、何人も特許復審委員会に無効審判を請求することができる。

第四十六条 専利復審委員会は無効審判請求に対して遅延なく審査及び審決を行い、請求人及び特許権者に通知しなければならない。
特許復審委員会が下した特許無効又は特許維持の審決を不服とする場合、通知を受け取った日から三月以内に人民法院に提訴することができる。人民法院は無効審判請求手続の相手側当事者に第三者として訴訟に参加するよう通知しなければならない。

第四十七条 特許を無効とする審決が確定したときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなす。特許を無効とする審決は、無効審判の審決の前に人民法院より下され執行された特許侵害の判決、仲裁合意書、すでに履行又は強制執行された特許権侵害紛争処分決定、並びにすでに履行された特許実施許諾契約及び特許譲渡契約に対しては、その遡及力を持たない。但し、特許権者の悪意によって他人に損失を与えた場合は、損害の賠償をしなければならない。前項の規定によって特許侵害賠償金、特許使用料、及び譲渡費用を返金しないことが明らかに公平原則に反する場合、全部又は一部を返金しなければならない。

第六章 強制実施許諾

第四十八条 次の各号に掲げる事項のいずれかに該当する場合、国務院特許行政部門は実施要件を満たす所属先又は個人の申請に基づいて、発明特許又は実用新案の強制実施許諾を発動することができる。
(一)  特許権を付与された日から三年が経過し、且つ特許出願日から四年が経過した特許が、正当な理由なく実施されていない、又は実施が十分でない場合。
(二)  特許権者の特許権行使が法的に独占行為であると認められ、当該行為が与える競争上の不利な影響を解消又は減少させるためである場合

第四十九条 国務院特許行政部門は、国家において緊急事態又は非常事態が発生したとき、又は公共の利益のために、発明特許又は実用新案の強制実施許諾を与えることができる。

第五十条 国民の健康を目的として、国務院特許行政部門は特許を得た薬品について、製造並びに中華人民共和国が加盟している国際協定の規定内にある国家又は地域への輸出に対する強制実施許諾を与えることができる。

第五十一条 特許(実用新案)権を取得した発明特許又は実用新案に、以前に特許(実用新案)権を取得している発明特許又は実用新案と比較して、経済的意義が顕著な大きな進歩を遂げており、その実施が前の発明特許又は実用新案の実施に依存している場合、国務院特許行政部門はこの特許権者の出願に基づいて、前の発明特許又は実用新案の強制実施許諾を与えることができる。前項の規定により強制実施許諾を与えた場合、国務院特許行政部門は前の特許権者の申請に基づいて後の発明特許又は実用新案の強制実施許諾を与えることもできる。

第五十二条 強制実施許諾に係る発明創造が半導体技術である場合、その実施は公共利益を目的とする場合、及び第四十八条(二)号に該当する場合に限る。

第五十三条 第四十八条(二)号、第五十条の規定に基づいて強制実施許諾を与える場合を除き、強制実施許諾の実施は主に国内市場への供給を目的とするものでなければならない。

第五十四条 第四十八条(一)号、第五十一条の規定に基づいて強制実施許諾を申請する所属先又は個人は、証拠を提出して、それが合理的な条件を以って特許権者にその特許の実施許諾を請求したが、合理的な時期に許可を得られなかったことを証明しなければならない。

第五十五条 国務院特許行政部門が下した強制実施許諾を与える決定は、速やかに特許権者に通知し、登録及び公告を行わなければならない。強制実施許諾を与える決定は、強制実施許諾の理由に基づいて実施範囲及び期間を定めなければならない。強制実施許諾の理由が解消され且つ再び生じない場合は、国務院特許行政部門は特許権者の請求に基づいて、審査を行った後に強制実施許諾の中止を決定する。

第五十六条  強制実施許諾を得た所属先又は個人は、独占的実施権を享有せず、しかも他人に実施を許諾する権利も持たない。

第五十七条 強制実施許諾を得た所属先又は個人は特許権者に合理的な使用料を支払うか又は中華人民共和国が加盟する国際協定の規定に従って使用料の問題を処理しなければならなず、その金額は双方の協議によって決定する。双方で合意に達しない場合は、国務院特許行政部門により裁決を行う。

第五十八条 特許権者が国務院特許行政部門の強制実施許諾に関する決定を不服とする場合、特許権者及び強制実施許諾を得た所属先又は個人が国務院特許行政部門の強制実施許諾の使用料の裁決を不服とする場合、通知を受けた日から三月以内に人民法院に提訴することができる。

第七章 特許権の保護

第五十九条 発明特許又は実用新案の保護範囲はその請求項の内容を基準とし、明細書及び図面は請求項の内容の解釈に用いることができる。
意匠の保護範囲は図面又は写真において表示された当該製品の意匠を基準とし、簡単な説明は、図面又は写真で表示される当該製品の意匠の解釈に用いることができる。

第六十条 特許権者の許可を経ずにその特許を実施、即ちその特許権を侵害し、紛争を引き起こした場合、当事者の協議により解決するものとする。協議に応じない又は協議が合意に達しない場合は、特許権者又は利害関係者は、人民法院に提訴することができるほか、特許業務管理部門にその処理を求めることもできる。特許業務管理部門が処理に際して侵害行為が成立すると判断した場合、権利侵害者に対して速やかに侵害行為を停止するよう命じることができる。当事者がそれを不服とする場合、処理通知を受け取った日から十五日以内に「中華人民共和国行政訴訟法」に基づいて人民法院に提訴することができる。権利侵害者が期限内に提訴せず侵害行為も停止しない場合、特許業務管理部門は人民法院に強制執行を申し立てることができる。処理を行う特許業務管理部門は当事者の請求に応じて特許権侵害の賠償金額について調停することができる。調停が成立しない場合、当事者は「中華人民共和国民事訴訟法」に基づいて人民法院に提訴することができる。

第六十一条 特許権侵害紛争が新製品の製造方法の発明特許に係る場合、同様の製品を製造した所属先又は個人はその製品の製造方法が特許の方法と異なることを証明しなければならない。特許権侵害紛争が実用新案又は意匠に係る場合は、人民法院又は特許権者又は利害関係者に対し、権利侵害紛争の審理、処理の証拠として、国務院特許行政部門が係る実用新案又は意匠に対して検査、分析及び評価を行ったうえで作成した報告書の提出を求めることができる。

第六十二条 特許権侵害紛争において、権利侵害で訴えられた者に実施した技術又は意匠が先行技術又は先行設計であることを裏付ける証拠がある場合は、特許権の侵害を構成しない。

第六十三条 特許を冒用した場合、法によって民事上の責任を負うほか、特許業務管理部門が是正命じ、且つ公告を行い、違法所得を没収する。また、違法所得の四倍以下の過料に処することができる。。違法所得がない場合は、二十万円以下の過料に処することができる。犯罪を構成する場合、法に基づいて刑事責任を追及する。

第六十四条 特許業務管理部門は、取得した証拠に基づいて特許冒用の嫌疑がある行為を取り締まるときに、関係する当事者に質問して、違法行為の嫌疑に関する状況の調査を行い、当事者が違法の疑いのある行為を行った場所において現場検証を行い、違法の疑いのある行為に関連する契約書、領収証、帳簿及びその他の関連資料の調査及び複製を行い、違法の疑いのある行為に関連する製品を検査して、特許の冒用を裏付ける証明がある製品に対して、差し押さえ又は押収することができる。
特許業務管理部門は法に基づいて前項に規定する職権を行使するとき、当事者はそれに協力しなければならず、これを拒絶、妨害してはならない。

第六十五条 特許権侵害の賠償金額は、特許権者が侵害によって被った実際の損失により確定し、実際の損失の確定が困難な場合は、権利侵害者が侵害行為によって得た利益により確定する。権利者の損失又は権利侵害者が得た利益の確定が困難な場合は、当該特許の使用料の倍数を参考にして合理的な数字を確定する。賠償金額には権利者が侵害行為を阻止するために要した合理的な費用も含めなければならない。
権利者の損失、権利侵害者が得た利益及び特許使用料の確定が何れも困難である場合、人民法院は特許の分類、権利侵害行為の性質及び状況等の要素に基づいて一万元以上百万元以下の賠償金を確定する。

第六十六条 特許権者又は利害関係者は、他人が権利侵害の行為を現在実施している、又はこれから実施しようとしていることを裏付ける証拠があり、それを直ちにに阻止しなければその合法権益に回復が困難な損害を被るおそれがある場合、提訴前に人民法院に関連の侵害行為の差し止め命令の措置を行うよう申し立てることができる。申立人は担保を提供しなければならず、提供を提供しない場合、申立は却下される。人民法院は申立を受け付けた時点から四十八時間以内に裁定を下さなければならない。特別の事情で延長の必要がある場合、四十八時間の延長が認められる。関連行為の停止の裁定は直ちにしなければならない。当事者が裁定を不服とする場合、一度のみ再審を申し立てることができる。再審の期間中も裁定の執行は停止しない。申立に誤りがある場合、申立人は被申立人が関連の行為を停止したことにより被った損失に対して賠償しなければならない。

第六十七条 特許侵害行為を阻止するため、証拠が滅失した又は後に取得が困難な可能性がある状況において、特許権者又は利害関係者は提訴前に人民法院に証拠保全を申し立てることができる。人民法院が保全措置を採る場合、申立人に担保の提供を命じることができる。申立人が担保を提供しない場合、申立は却下される。人民法院は申立を受け付けてから四十八時間以内に裁定を下さなければならない。保全措置を採る裁定を下した場合は、直ちに執行しなければならない。人民法院が保全措置を採った日から十五日以内に申立人が提訴しない場合は、人民法院は当該措置を解除しなければならない。

第六十八条 特許権侵害訴訟の提訴期限は、特許権者又は利害関係者が侵害行為を知った日又は知り得べき日から二年とする。発明特許の出願が公開されてから特許が付与される前までに当該発明が使用され、それに応じた使用料が支払われなかった場合、特許権者が使用料の支払いを求める訴訟の提訴期限は、特許権者が他人がその発明を使用したことを知った日又は知り得べき日から二年とする。但し、特許権者が特許が付与された日より前に知っていた、又は知り得べきであった場合、特許が付与された日から起算する。

第六十九条 次の各号のいずれかに該当する場合は、特許権侵害とみなされない。
(一) 特許製品又は特許製法によって直接得られた製品は、特許権者又は許可を受けた所属先、個人が販売後に当該製品の使用、販売の申し出、販売、輸入をする場合。
(二) 特許出願日前に同一の製品が製造され、同一の方法が使用されている、又はすでに製造、使用に必要な準備が整えられ、且つ従前の範囲内に限って製造、使用を継続する場合、
(三) 一時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国の運輸手段で、それが所属する国が中国と締結した協定又は両国が加盟している国際条約、又は互恵の原則に基づいて、輸送手段自体に必要な装置と設備に係る特許を使用する場合、
(四) 専ら科学の研究と実験のために、関係特許を使用する場合、
(五) 行政の認可に必要な情報を提供するために、特許医薬品又は特許医療機器を製造、使用、輸入する場合、及び専らそのために特許医薬品又は特許医療機器を製造、輸入する場合。

第七十条 特許権者の許可を得ずに製造、販売された特許侵害製品であることを知らずに、生産経営活動を目的として、使用、販売の申し出又は販売した場合で、その製品の出所の合法性を証明できる場合は、賠償責任を負わない。

第七十一条 第二十条特許の規定に違反して外国に出願し、国家機密を漏洩した場合、所属先又は上級機関により行政処分が課される。犯罪を構成する場合は法に基づいて刑事責任を追及する。

第七十二条 発明者又は設計者の非職務発明特許出願の権利とこの法律に規定されたその他の権益を奪う行為には、所属先又は上級機関により行政処分が課される。

第七十三条 特許業務管理部門は社会に特許製品の推薦する等の営業活動をおこなってはならない。
特許業務管理部門が前項の規定に違反した場合、その上級機関又は監督機関が是正を命じて影響を解消し、違法所得があるときはそれを没収する。状況が深刻である場合、直接管理責任者及びその他の直接の責任者に対して、法に基づいて行政処分を科す。

第七十四条 特許管理業務に従事する国家機関の職員及びその他国家機関の関係者が職務を軽んじて、職権を濫用し、私利私欲のために不正を働いて犯罪行為に及んだ場合、法に基づいて刑事責任を追及する。犯罪行為に至らない場合は、法に基づいて行政処分を科す。

第八章 附則

第七十五条 国務院特許行政部門に特許を出願する場合、又はその他の手続を行う場合、規定に従って費用を納付しなければならない。
第七十六条 この法律は一九八五年四月一日から施行する。

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